カフカ『審判』第1章 ~ 訳その2

Sofort klopfte es und ein Mann, den er in dieser Wohnung noch niemals gesehen hatte, trat ein.

訳) すぐにドアをノックする音がして、この居住地区では見かけたことのない男が入ってきた。

メモ)
die Wohnung はもちろん「住まい、住居」だけど、『アクセス独和辞典(第3版)』三修社によると、「Haus が一つの建物, 一戸建てを指すのに対し, Wohnung は集合住宅(アパート・マンションなど)の中の一住居を指す」とある。ただ、普通に読むかぎりアパートとかではないようなので、「居住地区」と訳してみた。だめかな?

Er war schlank und doch fest gebaut, er trug ein anliegendes schwarzes Kleid, das, ähnlich den Reiseanzügen, mit verschiedenen Falten, Taschen, Schnallen, Knöpfen und einem Gürtel versehen war und infolgedessen, ohne daß man sich darüber klar wurde, wozu es dienen sollte, besonders praktisch erschien.

訳) その男はスリムではあったが、しっかり鍛えられ、ぴたっとした黒い服を着ていた。それは、旅行服のように、さまざまな襞、ポケット、止め金、ボタン、そしてベルトが付いていたので、それゆえ、なんの役に立つかはっきりとはわからなくとも、非常に実用的に見えた。

メモ)
der Reiseanzug - まあ「旅行服」となるわけだけど、どんなものなんだろうか。ググってもよくわからない…。普通にドイツ人やオーストリア人はどんなもの思い浮べるのか。。

»Wer sind Sie?« fragte K. und saß gleich halb aufrecht im Bett. Der Mann aber ging über die Frage hinweg, als müsse man seine Erscheinung hinnehmen, und sagte bloß seinerseits: »Sie haben geläutet?«

訳) 「どちら様で?」とK.は訊ねると、すぐにベットで半分ほど身を起こした。だがその男は、自分が現われたことは問答無用とばかりにその問いを無視して、自分のほうから「ベルを鳴らしたかね?」と聞くだけであった。

メモ)
als müsse man seine Erscheinung hinnehmen がちょっと訳しにくい。seine Ersheinung は自分(男)が現われたこと。んで hinnehmen は「(運命などを)受け入れる」。ここでは「問答無用」と訳してみた。

ただ、 müsse は文法的にはどういうことなのかなあ。『アクセス独和辞典』には als ob...の説明で「定動詞として接続法第2式, 第1式または直接法が用いられる. ob を省略し, 『als+定動詞』の形をとることもある」。この箇所はこの ob が省略された als ob と理解すればいいはず。ただ müsse は形からすると命令形? うーん、よくわからない。。

ちなみに同辞書では müssen には命令形は無いことになっている(小学館の『独和大辞典』(手元のは第1版)には müsse! で載っている)。

この箇所で疲れてしまったので、とりあえずここで区切ります。

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